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後継ぎ専務と読む製造業のこれから④人が来ない、残らない?川口・埼玉のこれから

※この連載は、川口の金属加工会社を継ぐ予定の専務・宮田健太さんと、社長で父の正一さんを軸に、世界から地域まで製造業のこれからを全5回で考えるものです。登場人物と会社は、公的な統計や調査をもとに組み立てた架空のもので、実在の企業や個人とは関係ありません。引用した数字の出典は、記事の最後にまとめています。

※この連載でいう「ものづくり中小企業」は、中小企業基本法で中小企業とされる製造業の会社(資本金3億円以下または従業員300人以下)を指します。なかでも、従業員が数十人〜100人ほどの会社を主に想定しています。

食卓に置いた1枚のチラシ

機械も人も、会社の財産:専務・健太は「機械を入れよう」、社長・正一は「家まで担保に入れた」。どちらも、この会社を続けようとしている
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ハローワークに出した求人に、3か月ぶりに応募がありました。面接に来たのは、外国籍の30代の男性です。日本語での受け答えは丁寧で、前の職場でも旋盤を扱っていたといいます。

同じ週、会社には「ストレスチェックが、50人未満の事業場でも義務になります」という案内が届きました。

その夜、健太さんは、省力化の補助金のチラシを食卓に置きました。

「親父、機械を入れよう。補助金で半分は出る。人が来ないなら、人にしかできない仕事に人を回すしかない」

「借金してまで買う機械か。今の機械はまだ動く。俺はな、家まで担保に入れてこの会社を守ってきたんだ」

母は黙って、二人の湯のみにお茶を注ぎ足しました。

健太さんは思います。「親父が守ってきたものを壊したいわけじゃない。でも、川口の現場は、もう前と同じじゃない。」

調べてみると:川口では、働き手の顔ぶれが変わっている

川口では、働き手の顔ぶれが変わっている:川口市の外国人住民数は政令市を除く全国の市区町村で3位(2024年6月末)、人口に占める割合は7.1%(43,128人、2024年1月1日)。埼玉の外国人労働者133,049人のうち製造業は38,066人で28.6%(2025年10月末)
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健太さんの会社がある川口市は、外国人住民の多いまちです。川口市の資料によると、外国人住民の数は政令指定都市を除く全国の市区町村で3位です(2024年6月末時点)。2024年1月1日時点では43,128人で、市の人口の7.1%にあたります。

働き手として見ても、変化ははっきりしています。埼玉労働局のまとめでは、埼玉県で働く外国人は133,049人(2025年10月末時点)で、前の年より10.8%増えました。そのうち製造業で働く人は38,066人、全体の28.6%です。

健太さんの会社に応募してきた外国籍の男性は、たまたまではなく、川口の製造業の今を映していると考えられます。

データ:これからの数年で、現場のルールも変わる

これからの数年で、現場のルールも変わる:ストレスチェックは2028年4月から50人未満の事業場でも実施が義務に。中小企業経営者の平均年齢は60.7歳(2024年)で60歳以上が過半数。埼玉の有効求人倍率は1.11倍(2026年7月、季節調整値)
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職場の健康:働く人のストレスチェックは、これまで従業員50人以上の事業場に義務づけられていました。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、50人未満の事業場にも広がることになり、2028年4月1日から義務になります。健太さんの会社にも、あと1年半ほどで関わってくる話です。

人の取り合い:埼玉県の有効求人倍率は1.11倍です(2026年7月、季節調整値)。仕事を探す人1人に対して、1件を少し上回る求人がある状態です。

経営者の世代交代:中小企業白書2025によると、中小企業の経営者の平均年齢は60.7歳(2024年)で、60歳以上の経営者が過半数を占めています。正一さんのような世代から、健太さんのような世代へのバトンタッチが、あちこちで同時に進もうとしています。

働き手の顔ぶれが変わり、職場の健康への目が厳しくなり、経営者も入れ替わる。川口の現場は、ここ数年で大きく変わる時期にあると考えられます。

で、どうしたらいいのか

後継ぎ専務がまず打てる3つの手:①伝わる現場にする②声を聞く準備をする③機械と人を組み替える。まずは①から
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人が足りないなかで、来てくれた人に長く働いてもらうこと。そして、機械に任せられる仕事は任せ、人には人にしかできない仕事を担ってもらうこと。「人が来て、残る会社」になれるかどうかが、これからの分かれ目になると考えられます。次の3つが考えられます。

① 伝わる現場にする

① 伝わる現場にする:「見て覚えろ」「前にも言ったろ」ではなく、写真と短い言葉の手順書を作業場に貼る。やさしい日本語で1作業1枚にまとめる
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「見て覚えろ」という教え方は、言葉や文化の違う人には特に伝わりにくいと考えられます。写真と短い言葉で手順を示すことは、外国籍の人だけでなく、新人や若手にとっても働きやすさにつながります。

  • よく使う作業から、写真と短い言葉の手順書を1作業1枚でつくる
  • 「やさしい日本語」(短い文、漢字にふりがな)で書く
  • 手順書は作業場の目につく場所に貼る

② 声を聞く準備をする

② 声を聞く準備をする:2028年4月の義務化の前に一度やってみる。短いアンケートで職場の負担を見える形にし、個人を責めず職場を直すために話し合う
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ストレスチェックは、義務だからやる検査にもなりえますし、職場の声を聞くきっかけにもなりえます。義務化を待たずに、短いアンケートで職場の負担を見える形にしておくことが考えられます。

  • 2028年4月の義務化の前に、一度試してみる
  • 結果は個人が特定されない形でまとめる
  • 結果をもとに、個人ではなく職場の何を直すかを話し合う

③ 機械と人を組み替える

③ 機械と人を組み替える:繰り返しの作業は機械に任せ、人は段取り・検査・改善の仕事へ移す。省力化投資補助金(補助率は原則1/2)などの公的な支援も使う
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機械を入れることは、人を減らすことではなく、人の仕事を組み替えることだと考えられます。機械を入れる前に、空いた時間で人に何を担ってもらうかを決めておくことが大切です。

  • 繰り返しの作業のうち、機械に任せられるものを洗い出す
  • 空いた時間で、人に段取り・検査・改善などを任せる計画を立てる
  • 中小企業省力化投資補助金(補助率は原則1/2)など、公的な支援を調べる

まずは①から

3つを一度に始めなくてもよいと考えられます。手順書づくりから始められる①は、お金をかけずに始めやすい一歩です。

伝わる現場は、外国籍の人にも、新人にも、ベテランにも働きやすい現場です。次回は最終回として、ここまでの4回を受けて、健太さんが今、何から手をつけるかをまとめます。

ハーマスの考え方とご提案

ハーマスの考え方とご提案:地域の変化への備えは、現場の工夫だけでなく会社の仕組みで支えられる課題。①やさしい日本語で指示や手順の見直しを一緒に行う②義務化に先立つ職場アンケートで負担を見える形にする③省力化のあとの人の役割と育成を社長と一緒に考える
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合同会社ハーマスでは、地域の変化への備えを、現場の工夫だけでなく、会社の仕組みで支えられる課題として捉えています。どんな備えが合うかは、会社の規模や仕事の中身によって変わります。そのため、決まった型を当てはめるのではなく、社長と後継ぎ、現場の双方が納得できるやり方を一緒に探していくことを大切にしています。

このテーマでは、たとえば次のようなご提案をしています。

  • やさしい日本語で、指示や手順の見直しを一緒に行う
  • 義務化に先立つ職場アンケートで、負担を見える形にする
  • 省力化のあとの人の役割と育成を、社長と一緒に考える

絵にかいた餅にせず、時には現場に飛び込んで本質を追求し、できたらいいねではなく実際に変化を起こすこと。それを信条に、現場に入って伴走しています。

この連載では、後継ぎ専務の健太さんと社長の正一さんと一緒に、世界から川口まで、製造業のこれからを全5回で考えていきます。

出典

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